石笑 辛一

本当の道というものは

① 『大人が絵本に涙する時』柳田邦男:平凡社,2006年刊
② 『マイ・ラスト・ソング』久世光彦:文藝春秋,2006年刊
③ 『木を植えた人』ジャン・ジオノ・著 原みち子・訳:こぐま社,1999年刊

『大人こそもっと絵本を』運動を広めている人がいる。ノンフィクション作家の柳田邦男(1936年~栃木生れ)。氏がすすめる80冊の上記①の139頁にある3冊を図書館から借りて読んでみたが、すばらしい。『ペンキや』(理論社)、『マーシャと白い鳥』(偕成社)の2点の絵は出久根育。色づかいがいい。もう1点『すきまのじかん』(ひくまの出版)の絵はベルギーの若いA・エルボー。線がきれいで色も気品とやさしさがあり、出久根と同質感がある。『マーシャ』の巻末にやはりロシアの民話に基づく3点が紹介されているので『ハリネズミと金貨』を読んで見ると、これまた現ロシア最高のアニメ画家による絵が魅力的。

次に③。生涯南フランスから離れなかったジャン・ジオノ(1895~1970)の小粒ながら永遠の古典となったもので、別の訳では『木を植えた男』。これは実在の人物なのかフィクションなのか、どちらにしろ〝ある人が並はずれた人物であるかは、長年にわたりその人の活動を見つづければわかることで、その人の活動が、たぐいまれな高潔さによるもので、非利己的で見返りを求めずにいて、この世になにかを残してゆくことが確かであるなら、あなたはまちがいなく忘れがたい人物〟の前にいるのである、云々。ついでに日本人で宮脇昭氏(1928年岡山生れ・『苗木3,000万本 いのちの森を生む』NHK出版・2006年刊)は、日本一多くの木を植えた男で、アニメ作家・宮崎駿はこの人の影響を受けている。先日、テレビでケニア生れのマータイ女史が紹介されていたが、この人も生涯4,000万本を植えた。ノーベル平和賞受賞、今年9月没。

②はなつかしい人である。テレビドラマ演出家(「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」など)で作家・久世光彦(1935~2006年・東京生れ)。向田邦子的世界に通ずるものがあり、山本夏彦共著『昭和恋々-あのころ、こんな暮らしがあった』(1-あのころ、こんな暮らしがあった)(パート2)、『私があなたに惚れたのは』、『マイ・ラスト・ソング』(1)(2)は座右に置いておきたい名エッセイ。「マイ・ラスト」とは、もし最後の時になったら、ぜひもう一度聴いてみたい唄は何ですか、という架空のインタビューに答えた形のもので、むろん実際のアンケート集計ではなく、著者の空想や個人的思いの詰った唄を書き綴ったものだが、実に興深く、久世自身の告白によれば〝ワルツ〟狂? なんだそうで、「私はワルツにからっきし弱い。ワルツ好きはロマンティスト、もっと言うとセンチメンタルなのだそうだ。そう言われても私はちっとも恥かしくない」云々。

サテ、以下の言葉を読んで、一体誰が言ったのか、おわかりになりますか?

『本当の道というものは、広々としてまっすぐで明るくて、水晶のように澄みわたって、そのはてには、大洋が輝いている』

答・ドストエフスキー