石笑 辛一

話題の本2冊

① 『KAGEROU』斎藤智裕(1984年東京都生れ、芸名・水嶋ヒロ)ポプラ社小説大賞作品。ポプラ社・刊
② 『トイレの神様』植村花菜(1983年兵庫県生れ、シンガー・ソングライター。昨年末のNHK紅白に初出場。)宝島社・刊。同名楽曲は約10分もする長い唄だが、聴かせます。

たまたま、今話題の書に出会い、同時一気に読んだ。そして今日、再読した。
①は俳優、26歳(男)、②はシンガー・ソング・ライター、27歳(女)で、いわゆるタレント本の類かと思ったが、どちらもなかなかに読ませる内容だ。
①は自殺、ドナー(臓器移植提供)問題、いのち、自我のアイデンティティーを扱い、深刻なテーマながらユーモアもあり、②も、歌のちから、家族の絆を考えさせられる。両者とも二十代後半で、こういう感じ方・考え方をしている若者がいるんだナ、意外に古風? だと知った。
余話として=ことし一年をふりかえって。ナゼか偶然だが、サイトーという名の人に縁が続いた。
(1) 斎藤孝(1960~静岡県生れ・明治大学教育学部教授)
声に出して読みたい日本語』『身体感覚を取り戻す』がベストセラー。
(2) 斎藤英治(1940~山形県生れ・医学博士)
世界一わかりやすい速読の教科書』『いい睡眠はいい人生 をつくる-分割すいみんのススメ
(3) 斎藤一人(ニッポン一の高額納税者、つまりお金持ち)
眼力』『微差力

上記の斎藤以外にも、ハンカチ王子こと斎藤祐樹の活躍に期待が高まる。物騒なワルい方のサイトーも出現。斎藤勇太(27歳)がバス・ジャックし、中高生十数人を切り傷けた。無職でこんな事件を起こして「自分の人生を終わらせたかった」そうな。3年前にも秋葉原街でも無差別通り魔殺人事件があったが、現代はますます『カラマーゾフの兄弟』より『罪と罰』に似てきたか。ドストエフスキーの予言力=眼力に脱帽!

新聞の発表によると、今年のベストセラー上位10点には、タレント本やダイエット本が多いが、村上春樹も健闘した。一方、東販・日販を通さない本が75万部も売れた。いわく、『超訳 ニーチェの言葉』。

先行不透明、混迷の時代に人は「指針」が欲しい。かつての右肩上がりの繁栄も、アメリカン・ドリームも終焉、サテ、次はどこへ?

バカの壁』という超ベストセラーのある養老孟司とTVディレクターのテリー伊藤の対話集『日本人の正体』には、なかなかにおもしろいヒントがある。コレカラのニホンを元気にするのは、サムライではなく、オバサンのちからだ、と言うのである。オレだ男だなんてイバッてきた果てに今の情けないニッポンがある。

しかし、そう悲観したもんじゃない。ニホンにはまだまだいいものがいっぱいある。中小企業の独創的技術力を見よ、オキナワのおバアたちをごらんよ。ニホンには四季があるじゃないか。物が豊かだし、治安も先進国の中ではいい方だ。

水と安全はタダだと思っている日本人は平和ボケもいいところだが、いったん目覚めると日本人はがらりと一変する。落日が囁かれている一方、日はまた昇る。ニホンは逆説の国なのだ。来る年はウサギ年「ふさぎ」のトシにならぬように祈る。