石笑 辛一

思想はコワイ

① 福田和也『日本人の目玉』(1988.新潮社)
② 中川八洋『福田和也と<魔の思想>』(2005.清流出版)

思想はコワイ。また、知らぬがホトケ。福田を読んだのは今年からで、『悪の読書術』に始まり、『大作家“ろくでなし”列伝』『作家の値うち』『闘う批評』ときて、いま、①『日本人の目玉』。福田は、1990年代には、建築の磯崎新や哲学の浅田彰と並ぶ、ポストモダンのトリオとして活躍していたのだが、知らなかった。読んでたちまちひきつけられた。小林秀雄は批評を作品としたが、福田も読める作品としての評論を目ざし、文芸以外の政治論も手がけ、その眼識・力量は天才的ですらある。

しかし、である。福田という人間の正体は……?
中川八洋による②は、福田糾明の書。これで、いわゆる「ポストモダン」の思想・文芸がわかった。コレは、皆殺しの思想である。地上に国家なるものを消滅させ、原水爆戦争による地球廃墟=死の星化をもよしとするウルトラ・スーパー・アナーキズムである。アナーキズムとかファシズムは昔からあったが、福田のは空前絶後と言っていい。ことわっておくが、無政府主義とか共産主義思想そのものは、悪でナイ。ぼくの中にも相当な革命家が住んでいる。アウトサイダーとか、漂泊の旅人とか、ユートピアへの夢想はある。

だが、福田みたいに人を殺してナゼいけないか、人非人=ならず者、自称ファシストを告白する一方、愛国者保守主義者ともいう、その心根の程がよくわからない。ポストモダン家は、よく言語のパロディとイロニ―をあやつるのに長けているようで、反国家がナショナリストになり、反天皇反日の丸を表に出さないから、うかつに読むとだまされてしまうのだ。

数年前に『こんな日本に誰がした』(谷沢永一1929~、クレスト社刊)を読んだが、これは大江健三郎への告発状で、じつに痛快だった。二十代の頃は「危険な思想家」にもコーフンした。要するに、大江をはじめとする進歩的文化人たちを告発、目からウロコでくわばらくわばら。福田いわく、保守は死んだ。では“左翼は生きてるか?”イキている。出版・放送・新聞~学界・教育界に“隠れ左翼”はうじゃうじゃいるのだ。

オニは外! 福はウチ、いや、福田も外! 日本共産党は保守だ。憲法を守る、生活を守る、子供・老人を守るといっているが、日本の防衛はどうするの?オキナワの基地は?
ここまで書いて、ナンダカ阿呆らしくなった。政治や思想・信条など、どうでもええがな。“わたしゃ本郷(東大)へゆくわいナー”? いや、行かないヨ、一寸、三四郎池あたりを見てみたい気もあるが。そうそう奈良・飛鳥大和路も熊野路の行きたいネ。どうも、縄文的文化風土の濃い所―信州・オキナワ・福島・宮崎など―に年々ひかれる。

大相撲で白鵬が54連勝中。土俵はモンゴル、ロシア、韓国、中国人もいて、日本の若手もガンバレ。柔道ニッポン復活。ま、“気”とか“間”、“イキ(呼吸・ハラ)”の思想は失って欲しくない。福田など気にせんと、大腸夫(ダイジョーブ)!  By 日本国土厚生庁腸管 トラジロー・ナカノ