洲之内徹

「マドリードからの手紙」

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明と暗といってもいいし、光と影といってもいいが、彼の絵では明より暗に、光よりも影に、だいじな役が振られているらしい。明の中にはモランディの物は存在しない。素描ではしばしば、物は黒い影の中に切抜かれた、その物の形の白い穴に過ぎない。そして、油絵でもそうだが、物が明るい面の輪郭はわざとのように取払われて、物は、その明るい部分で周囲の空間の一部になってしまう。残るのは影だ。影が実存する。だが、だからこそ、私たちは限定されることのない、無限の可能性を秘めた存在をそこに感じさせられる。存在は可能性として現れる。まさに虚々実々だ。それにしてもこの不思議さ、この美事さ、そして、この自由。