海野 清

「ガランスの悦楽 没後90年 村山槐多」

「本日休館」第12号をお届けします。

12月5日(土)昼、渋谷ハチ公前でトラジロー・ナカノ氏と待ち合わせ。小雨降るなか、途中お蕎麦屋さんに立ち寄りながら、渋谷区立松濤美術館へ向って歩きました。渋谷駅からの距離は思っていたより近かくに感じました。

入場料300円?とても安い料金です。しかも、窪島誠一郎氏の講演も聴けるのです。だからという事もないでしょうが、会場は混んでいました。

会場の大きな広い壁に、大きな文字で、「ためらうな、恥ぢるな」からはじまる槐多の詩がディスプレイされているのが印象的。

ところで「ガランス」ってなに?と会場を歩きながらトラジロー氏と話をしていたところに、タイミングよく、その説明がされている場所にきました。 [garance]はフランス語。日本語では「茜色」と訳されるそうです。槐多が好きだった色。

槐多の絵には圧倒されました。中でも「芍薬」「カンナと少女」。絵がまぶしく感じられます。絵に向き合うのがちょっと怖い。今年4月、宮城県美術館で開催された『洲之内コレクション』展で「一番欲しい絵」と決めた「風景」と題された絵も展示されていました。また巡り会えたことに感謝。何回もその絵の前に立ちました。他の絵と比べると小さな絵ですが、惹かれる理由を言葉にすることが未だに難しい。

窪島誠一郎氏の講演は、座れない方が数十人もいるという具合、多分150人以上の方が会場をいました。早めに席を確保していて良かった。

窪島氏が17歳の時に出会った「村山槐多画集」(当時1,500円で購入したそうです)。すべてはそこからはじまった槐多と正面から向き合う窪島氏の壮絶な人生が語られていました。
「槐多との出会い=自分はどう生きたか?を問う。命というものを突きつけられた」
「あのガランスは、ここに生きている自分というものが色になる、線になる」

講演が終わったあと、紅茶を飲み、会場をもう一回りしました。
入口近くの壁にディスプレイされた「ためらうな、恥ぢるな」からはじまる詩が、槐多の祈りであることに気がつきました。

……ガランスのチューブをとって
……ガランスをまっすぐに塗れ
……ガランスをつくせよ
……ガランスに塗れ
……ガランスに描け
……ガランスにて描き奉れ
……ガランスにて描き奉れ
……ガランスにて塗りかくせ

ガランスに籠めた祈りの向こうに、あの「風景」と題された小さな絵があるような気がしました。
次回で「本日休館」は4年目に入ります。TOPのデザインを少し換えてみたいと思っています。
2010年3月末に更新を予定しています。では、それまでごきげんよう。皆様、良いお年を。