高橋正也

1982年外国映画ベスト10

① 愛の奴隷(ニキータ・ミハルコフ)
② オブローモフの生涯(ニキータ・ミハルコフ)
③ アレクサンダー大王(テオ・アンゲロプロス)
④ 1900年(ベルナルド・ベルトリッチ)
⑤ ラ・パロマ(ダニエル・シュミット)
⑥ 今宵かぎりは……(ダニエル・シュミット)
⑦ 天使の影(ダニエル・シュミット)
⑧ 父 パードレ・パドローネ(パオロ・タヴィアーニ/ヴィットリオ・タヴィアーニ)
⑨ 罪物語(ヴァレリアン・ボロヴィック)
⑩ 落葉(オタール・イオセリアーニ)
(次点)光と影のバラード(ニキータ・ミハルコフ)

ロシアを考える場合、最も重要なものは何か? それはロシアの大地だ。いわゆる母なる大地である。フルシチョフ時代、「戦場」という映画だったと思うが、ロシアの兵士が、大地に向って、「おゝ母なる大地よ!」と語りかける場面があった。この場面については、ゴダールも絶賛していたが、強烈な感銘をあたえる場面であった。ロシアの大地に比較すれば、「1900年」や「パードレ」のイタリアの大地も、「アレクサンダー」のギリシャの大地も、いかに貧相なものであるかを痛感する。

「愛の奴隷」のラストシーン、オレンジ色の朝焼けの地平線に、騎馬憲兵に追われるオリガの人影が静かに消えていく。どこへ? 母なる大地の地霊が彼女を呼んでいるのだ。
「オブローモフ」の最後の場面。広大な大草原、ムンムンする草いきれ。この場面における強烈なロシアの大地の息吹きは、ロシア映画史上比類がない。

ダニエル・シュミットの映画には、「人が居る」ことが、即ち政治であるという視点がみられる。これは興味をひく。これからどんな映画をとり続けるか期待しよう。

「罪物語」は深刻ぶったベルイマンの映画より、はるかにキリスト教の精髄をとらえている。最も肉的でない恋愛が、最も強いのだというジードのことばと同時に、悪とは、善がみずからの完全さの故に担った影であるというグレアム・グリーンのことばとか、罪人は、キリスト教世界の核心にあるにあるというシャルル・ペギーのことばを想起するものだ。尚、有名なメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲がサワリの部分使用されるのだが、画面と一体化してすばらしく感動的である。

グルジア映画「落葉」のトップシーン、ぶどうの収穫の場面は、すぐれている。「人は大地に触れて生きるべきだ」(イオセリアーニ)という作品だ。「光と影のバラード」プロローグとラストシーンの、素朴な十月革命賛歌の場面は印象的なのだが、中間部分のあまりの」西部劇調にはウンザリ。(映画芸術 1983年2月号より)