海野 清

「宇野マサシ新作展」

本日休館 第6号(2008夏)

4月13日(日)小雨ふるなか、静岡駅北口からJR東名ハイウェイバスに乗って、東京駅日本橋口に。予定どおりの到着時間だった。地下鉄銀座線日本橋駅から浅草へ。
目指すは「ギャラリー ア ビアント(Gallery A BIENTOT)」。

午前11時からのオープンと書いてあったので、「吾妻橋」で写真を撮って時間をつぶした。

11時を少し過ぎたところで、画廊に入った。入る前に店の写真を撮ろうと思いカメラを手にしたが、いきなりカメラを向けては失礼かなと思い、やめた。

客は私ひとりだった。絵を観ている間には誰か入ってくるだろう……。入口近くの絵から少しずつ奥へ。絵の下に金額が書かれた札が張ってある。ここは美術館ではなく、画廊なのだ、という事をあらためて意識した。一通り拝見させていただき、この中で一番欲しい絵を決めた。『公園の日暮れ』というタイトルがあり、32万円だった。もう売れてしまっているのかな……とても買えないが、気になった。画廊の方に「売れた絵はあるのですか?」と聞くと「まだなにも。今、絵はそう簡単に売れません。特に、宇野先生の絵はお高いですから」という事だった。その話がきっかけとなり、画廊の方が「この展覧会をどうしてお知りになりましたか?」と聞いてきた。返事に困っていると、「今日はどちらから?」という話になったので、少しホッとして「静岡から来ました」と応えた。しかし「案内状が届きました?」と戻され、「宇野先生からの案内状ですか?」と再び言われたので、私は肯いた。すると「宇野先生は、多分、隣の店でお茶を飲んでいると思いますので呼んできます」と言うではありませんか。「いや待って下さい。別にお会いしにきた訳ではないし、緊張してしまうのでやめて下さい」と言ってとめた。すると、別な女性が入って来た。奥様の書道家・小畑延子さんだとすぐにわかった。(両腕を事故で失いながら、不自由を克服して書家として活躍しておられる)

画廊の方に「お茶を入れますので、ゆっくりして行って下さい」といわれた。……早くお客さんが入ってこないかな……そんな事を思いながらも、私はちょっと早いけど、そろそろ帰ろうと考えていた。が、その言葉で覚悟した。

いつの間に出て行ったのかわからなかったが、奥様の小畑延子さんが「すぐに来ますから」と言って画廊に戻ってきた。

ちょっとして、作業着を着た宇野先生が入って来た。本の御礼と、先生から直接、本が届いたので驚いたという話をした。宇野先生は昨日、上田市にある窪島誠一郎さんの美術館に行っていた話しをしてくれた。頭がボーとしていた。なにを話せばいいのか困った。

私もその上田市にある美術館に行って、「鈴木時治さん」の絵を観てきます、と話した。奥様から、次の展覧会は愛知県豊田市でやる、という話をおききした。

帰り際、芳名帳に住所と名前を書いた。「私は勤め人をしていて、日々つらい事が多いのですが、今日、絵を観ることができ、また先生と会う事ができて、とても救われた気分です」というような事をしゃべり、御礼を申し上げて画廊を出た。思わず泣きそうになった。 小雨はやんでいた。振り返らず歩いた。持っていた帽子を被ろうとした。左手でずーっと握っていたその帽子の中に、カメラがあった。「ああ、なにも撮らないで、きてしまった」と後悔したが、すぐにあきらめがついた。「次回の豊田市で撮ろう」

吾妻橋で、手にしたカメラを駒形橋の方に向けてシャッターを押した。 時計を見たら11時50分だった。濃い時間だった。その間、客は私ひとりだった。いつになるかわからないが、絵を買おう、そう決意した。

築地政男さんの「おいしいお茶をつくろうと思った」は今回で一旦終ります。またいつか、お茶に纏わる話題を提供してくれると思います。次回は9月末に更新する予定です。では、それまで、ごきげんよう。

管理人   海野 清
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