海野 清

『田島隆夫の織と繪』 ~この一冊★本日休館コレクション No.6

 

古書店「本日休館」所蔵の一冊『田島隆夫の織と繪』と函の写真

古書店「本日休館」所蔵の一冊『田島隆夫の織と繪』函入り


 8月下旬、個人美術館フロムウィンズ(神奈川県南足柄市雨坪404)にて開かれている『企画展 没後20年 田島隆夫の彩墨画』に妻と行ってきました。
 今回が初公開となる「千字文」を含む30数点、と案内にありました。「千字文」ってナニ?
恥ずかしながら知りませんでした。調べてみたら、「千字文(せんじもん)」とは「中国六朝の梁の周興嗣が武帝の命により選した韻文」で、「『天地玄黄、宇宙洪荒』に始まり、『謂語助者、焉哉乎也』に終わる、天文・地理・政治・経済・社会・歴史・倫理などの森羅万象について述べた、4字1句250の短句で1千文字から成る」とのこと。漢字の初等教科書や習字の手本として流布したそうです。

 展示されていた「千字文」は『天』『地』『玄』『黄』『雨』の5点でした。250句の最初の4字と、フロムウィンズ・オーナーの窪田さんが「この字が好きなので選んできました」と言う『雨』。田島隆夫は絵も書も独学だったようですが、どの作品も衒いがないということを一番に感じます。

 いつもよりゆっくり見て、自分の手元に置きたいと思う作品はどれだろうと選んでいましたが、欲しい絵ばかりでなかなか決まりません。再度、一周して「しょうが 大暑」に決めました。いつか機会があったら手に入れて自宅に飾りたいなあ……と思いながら、挨拶して帰ろうと靴を履こうとした時、正面(出入口横)にどこにでもあるような畑の風景を描いたものが壁にかかっていました。それまで気が付きませんでした。

 「これも田島さんの作品ですか?」
 「そうですよ」

 このような作品は見たことがありませんでした。こんな風景も描いていたことに感激して、これを”一番欲しい絵”に変更しました。作品には田島隆夫のサインもなく、いつ描かれたものかもわからず、シミがたくさんありました。でも、この「風景」が一番。この人はたしか、子どもの頃、絵描きになるのが夢だった、ということをどこかで書いていなかったかな・・・。ふと、そんなことが浮かびました。

 『田島隆夫の織と繪』は、田島隆夫の七回忌にあわせてつくられたもの。「あとがき」で夫人の田島道子様がそのことについて書かれています。
表紙には田島隆夫が織った裂を使って装丁した、限定14部の美しい特装本だったようです。当「本日休館」所蔵の一冊はその後に刊行された普及版で、2002年10月10日再版発行、となっています。版元は湯川書房。京都の古書店にて手に入れたものです。

 1か月遅れましたが、本日休館・秋号お届けします。次回更新は2017年1月を予定しています。