ディシー沢板

映画、観てない

『ニュー・シネマ・パラダイス)』(1989年、ジュゼッペ・トルナーレ監督作品)の一場面


 本サイト館主から「今度、映画について書いてくれ」と頼まれた。以前なら少し苦労しながらでも何とか書けただろうが、今は書くことが出来ない。映画を殆ど見ていないからだ。

 「映画について書いてくれ」-- 20年以上前になるが、同じような依頼を受けたことがあった。当時館主さんは『ラッシュ』という、ハガキより一回り大きなA6版に映画に関するエッセイを載せたミニコミペーパーを映画館に置いていた。それへの原稿依頼。確か、大学の友人が恐山にバイク旅行に行ったことと寺山修二の『田園に死す』を絡めた文章を書いたのだったと思う。以来付き合いを続けさせてもらっている。

 北海道を離れ、今は名古屋に住んでいる。先日ひょんなことからある映画館を見つけた。会社の人間と焼き鳥を食べようと今池スタービルで店の入口を探していたら“名古屋シネマテーク”と書かれた看板を階段の奥に見つけた。こんなところに映画館が?と思ったが、猥雑なビルの雰囲気からあまり気にも止めなかった。

名古屋シネマテークのあるビル外観

名古屋シネマテークのある今池スタービル。2階に看板が出ている。

 後日、どことなく懐かしい昭和的な雰囲気が気になったて色々調べてみると32年の歴史を持つ40席のミニシアターとのこと。10月は『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』(ジャンフランコ・ロージ:70回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞)、『イーダ』(パヴェウ・パヴリコフスキ:ワルシャワ映画祭グランプリ)、『花火思想』(大木萌)、『FORMA』(坂本あゆみ:第64回ベルリン国際映画祭フォーラム部門で国際批評家連盟賞)、『物語る私たち』(サラ・ポーリー:ロサンゼルス映画評論家協会賞最優秀ドキュメンタリー賞)、『ぼんとリンちゃん』(小林啓一:第36回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞)等々やセルゲイ・パラジャーノフ生誕90周年映画祭全6作品上映と面白そうな映画をやっていた。

 ある雑誌にこの館のスタッフのコメント有り。「上映基準は、大雑把な言い方をすれば“個性的な映画”。大ヒットは望めないけれど、見た人の心にいつまでも残るような、インパクトの強い作品を選んでいます。派手さはありませんが、その分、好きな作風に出会えると、とことんその世界観に没頭できます」と、渋い。

 更にもう一つ、ここでは近年のデジタル上映だけでなく、月に1本は従来のフィルム上映をやっているようだ。
「上映中のカタカタという音や、独特の光の強さ、1秒間に24コマという脈打つ動きはフィルムならではの面白さ」。
こんな映画館もまだあるんだと、感動しつつも・・・。10月も11月も12月も、近くで飲んではいるが、映画館には入っていない。映画はまだ見ていないのである。

 多忙な日常? ずっと見ていないという後ろめたさ? 映画を観るという労力に耐えられないかもしれないという怯え? 本当はもう見たいと思っていないのではという戸惑い?
 そんなことはないとは思いますが、結局のところ映画、観てないです。

 中学の時、街にスカラ座という2番館があった。最初は100円だったと思う、その後130円。2週間隔で作品が変わる100席程度の小さい地下の映画館。作品は何であれ2週間に一度は通っていた。(シネマテークはあの雰囲気に似ているのだろうか?)
 大学時代はオールナイトのはしご、映画館のもぎりのバイト&映写補助、更には自主上映会主催。恐山にバイク旅行をした友人が撮った映画にも出たりした。映画が近くにあり、結構見た。でも・・・。

 昔話はやめよう。
 「今は今なんだと。今を未来のためにだけに使うべきじゃないと。」=恩田陸『夜のピクニック』
 「今は今なんだと。今を過去のために使うべきじゃないと。」=沢板

 今度この映画館に来よう、この今を感じるために(映画館は今池(今、生け)だし)。館主さん、次、映画の話を書きます。

[*ページTOP画像は1989年、ジュゼッペ・トルナーレ脚本・監督『ニュー・シネマ・パラダイス(NUOVO CINEMA Paradiso)』アスミック・エース配給DVDによる。]