築地 政男

“休日は茶畑で”-かぼちゃのポタージュ

静岡市清沢地区の茶畑風景画像

静岡市清沢地区の茶畑



「休日は茶畑で」にはもう書くことは無いつもりでいたのですが、館主からの再三再四のリクエストにより、重た~い筆を持ち上げる運びとなりました。
文字を読むことは好きですが、書くことは随分エネルギーを要することです。なんといっても不特定かつ多数?の人が読むかもしれないという点は汗顔の至りであります。まして昼間活動した後にこうした作業は、晩酌が唯一の楽しみな私には、無い頭を悩ませるうえに、最近の言い方でいくとモチベーションが上らないのです。・・・と、愚痴を言っているうちになんとか数行目に達しましたので、去年の夏から続けていることを綴っていきます。

我が家では蕎麦を播種から麺打ちまでをやってきたので、父が亡くなって初めて、緑茶同様自分でやるようになりました。

3年ほど前でしょうか、それまで蕎麦用に借りていた畑の持ち主が定年を迎えて数年で退職するので農作業をするつもりとの話しがあり、お返しすることといたしました。車を横付けできる耕作放棄地を物色していたところ、適当なところがありました。所有者は母が知り合いの方であったので一緒に頼みにいったところ、快諾いただき、かつ無償とのこと。そこで作った蕎麦を年末に届けたところ、平身低頭の体で「畑は荒らさず使ってくれればそれで充分だから、こんなことしてくれなくてもいいからね。」の言葉をいただきました。その方は90歳を越したおばあさんです。帰りの暗く冷たい風が吹く冬の夜道も、ひさしぶりに清々しい心温まる思いをしました。

年も変わり、その方から母に「もう一箇所畑を使ってくれないかね?」と電話がありました。そこは蕎麦用に借りている場所の同じ道沿いで、200メートルほど手前で車も横付け出来て、沢水も容易に使える場所。その上しっかりと猪除けのトタンが、ぐるりと四方を囲んで設置してあるのです。もちろん、借りることにしました。

去年の梅雨明けの頃、仕事を終えて帰宅してから深耕鍬を持ってその畑へ向かいました。心の中はどんな土なのか楽しみでしたが、グサッと鍬を刺した時の足に来た感触は「硬っ!こりゃ大根や人参や里芋は無理だ。」でした。

まず土作りだなと思い、8月の会社の夏休み中に、予ねて伐採した茶の木を運んで燃やしました。川原でバーベキューを楽しむ人たちの光景を尻目に「そうそう全て条件が揃う話があるわけないよなー・・・。でも、土作りの勉強として借りた以上やってみるしかないよな。」と滴り落ちる汗を拭いながらつぶやいたものでした。

秋になり、茶園に寒肥として入れる有機物のうち籾殻燻炭作りの時季となりました。その作業をこの畑ですることにしました。
籾殻燻炭作りは民家の近くでは独特の煙と臭いがすることもあって、それまでは籾殻を背負子で担ぎ上げ、山道を歩いていったところで作業していました。体力的に格段に楽になります。

一回に三箇所の煙突を立てて焼きます。ドラム缶2本分できますが、灰になる手前の段階で空気を遮断して炭状に仕上げるので、焼きはじめて2時間から3時間は、のんびりと携帯コンロで朝食を作って摂り、ラジオを聴きながら過ごします。その後は、灰にしないようにかき混ぜる作業と、黒くなったら即ドラム缶へ入れる作業で、俄然忙しくなります。
熱いし煙いしで、毎回もっといいマスクを買おうと思いながら、購入せずに本番を迎えてしまいますが、土はこうして熱を加えることで軟らかくなってきます。

この畑に燻炭と菜種粕を入れ、余っていた米糠を足したところ、翌日囲っていたトタン2箇所がめくり上げられていました。明らかに米糠を施したことで、臭いに敏感な猪に入られてしまったのです。幸いまだ作物も無い状況なので、土をかき回されただけに終わりましたが、米糠は当分使わないこととしました。

さて、そろそろ何を作るか決める時季を迎えました。ちょうど、かぼちゃのポタージュを作って我ながら美味しいと思ったので、その材料になる玉葱を作ることにしました。

ただ、夏には気づかなかったのですが、ここは冬になったら極端に陽射しが少なく、1日に3時間射しているのかな~?、という程度なのです。完全に谷合(たにあい)です。
苗を100本買い植え付けましたが、霜が降りて霜柱が出来、寒さも増してきました。このままでは苗が凍って枯れてしまいそうなので、何か対策を立てなくてはなりません。

ハタと思い出したのが、地元の神社が拝殿の窓をアルミサッシ材に変え、それまでの木枠の窓がはずされたまま放置されていたことです。早速、役員の了解をいただいて畑に運びました。叔父からは、檜を切り倒してあるのを自由に使っていいよと言われていたので、その枝を支柱にして打ち込み、畑から川側の斜面に生えている竹を梁代わりにして窓を立て掛け、白色の寒冷紗を上前面に張りました。これでひとまず安心ですが、それでも寒さが気になるので、作った籾殻燻炭をたっぷり敷き詰めました。

今、毎週一回見に行っていますが、寒冷対策はいまのところ成功したかなと思っています。
ただ、苗は青々とピンと立っていますが、成長はひどくゆっくりとしています。窓を外し、寒冷紗も外せるようになって、初めて本格的な成長をすると予想しています。
ゆっくりとした成長だからきっと味もいいはず・・・と、秋にポタージュを作るのを、今から楽しみにしています。